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  • 2010.09.05 Sunday
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湯浅誠『反貧困』

 生活保護はすばらしい!
貧困を見る、可視化するとは、同時に目に見えないその人の境遇や条件(“溜め“)を見る、見るように努力するということを不可欠の要素として含んでいる。
 「昔はみんな貧乏だった。それでも頑張ってきたんだ」「世間は厳しい。甘えるな」「俺だって大変なんだ。あんただけじゃない」ーこうした言葉は、日常的に耳にする。そのとき人は概ね、いかに客観的な状況が大変だったとしても、本人の心がけ次第、頑張り次第で道は開ける/我慢できる、という神話を反復している。それは多くの場合、自分が頑張ってきたことを認めてもらいたい、という承認の欲求に根ざしているが、率直にそれを表現できない人たちは、しばしばそれを他者に対する叱責として表現する。
 人情としては、仕方の内面もある。大学受験に合格した人が「それができたのは、高い教育費をかけてくれた親がいたからだ」と考えることは少ないだろう。やはり「自分が頑張って受験勉強に耐え抜いてきたからだ」と考えるし、考えたい。昔貧乏で今成功している人たちも、「それができたのは、家族や地域・友人の有形無形の援助があったからだ」と考えるよりは、やはり「貧乏でもこつこつと頑張っていれば、必ずいいことがある」と考えるし、考えたい。それは自然なことでもある。
 困るのは、返す刀でそれば条件の異なる他者に向けられるときだ。「自分も頑張ってきたんだから、おまえも頑張れ」という言い方は、多くの場合、自分の想定する範囲での「客観的状況の大変さ」や「頑張り」に限定されている。そのとき、得てして自他の“溜め“の大きさの違いは見落とされる。それはときに抑圧となり、暴力となる。(pp.87-88)

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